手術3日後

一般病棟へ移動した。部屋は運良く手術前と同じ個室だった。
相変わらず後頭部が痛い。目の前では物体が浮遊している。そして目をつぶると、いろんなものが見える。まるで美術館にでも来ているよう。芸術作品が勝手に動いている。
壁の向こうからは女性のうなり声が聞こえる。
どうやら麻酔のせいで幻覚・幻聴が起きているようだ。そう思うと気が楽になってきた。

尿管を抜く事になった。尿管を抜いたら自分で尿瓶(しびん)に尿をしなければならない。筋力が落ちているだろうから尿管を抜いた瞬間、そのまま尿が出てしまうんじゃないか心配した。しかし大丈夫だった。体はうまくできているものだ。
しばらくして尿意が。看護師さんを呼んで尿瓶をセットしてもらう。5分位粘るが出ない。腹筋が落ちたのか?尿意だけが徐々に強くなっていく。仕方ないので看護師さんを呼んでまた尿管つけてもらった。少し痛い。フー、スッキリ。2回ほど自力で試みたがダメだった。

医師が問診に来た。尿の事を伝えると、「トイレに行って座ったら、案外出ますよ」と言われた。いいけどトイレまで歩けるのか?と思いつつ何とか2m先のトイレまで歩いた。看護師にオムツを外してもらって便器に座った。出た。何の事はない重力のおかげだった。

リハビリ担当の先生が来た。この人は言語聴覚士といって発声や飲み込む機能のリハビリを担当してくれるらしい。実際、人工呼吸器のせいでかすれた声しかでない。声量もごくわずか。ごく少量の水を飲まされた。ゲホッ、ゲホッ・・・むせる。退院までの2週間でリハビリしていくとの事。長い道のりだ。